節約ツールナビ

家計簿アプリで実現する総資産管理入門 貯蓄から投資まで一元化

Tags: 総資産管理, 家計簿アプリ, 資産運用, 新社会人, ツール活用

はじめに

お金の管理は、日々の支出を把握することから始まります。家計簿アプリはその第一歩として有効であり、多くの新社会人の方が活用されていることと存じます。しかし、家計管理の範囲を広げ、将来の資産形成を見据える上で、「総資産」を把握することの重要性が高まります。

総資産とは、単純な預貯金だけでなく、投資信託や株式、不動産、さらには企業型DCやiDeCoといった年金資産、ポイント資産など、ご自身が保有する全ての資産を合算したものです。これを定期的に把握することで、資産がどのように増減しているか、目標達成に向けて順調に進んでいるかなどを客観的に評価できるようになります。

本稿では、家計簿アプリを支出管理の中心に据えつつ、これを総資産管理に発展させていく方法について、具体的なツールや連携の可能性を含めて解説いたします。

なぜ総資産管理が必要か

日々の支出管理は「フロー(流れ)」の管理です。対して、総資産管理は「ストック(蓄積)」の管理と言えます。フローとストック、両方を管理することで、ご自身のお金全体の状況を立体的に把握することが可能になります。

新社会人の段階では、総資産の大部分は預貯金かもしれません。しかし、キャリアを重ねるにつれて収入が増え、貯蓄に回せる金額が増加し、NISAやiDeCoなどを活用した投資を検討される方も増えるでしょう。また、近年ではポイントも実質的な資産として無視できない存在となっています。

これらの資産がどこに、どれだけあるのかを把握していないと、以下のような課題が生じ得ます。

総資産を管理することで、これらの課題を解決し、より計画的に、より安心して資産形成に取り組む基盤を築くことができます。

家計簿アプリの資産管理機能と限界

多くの家計簿アプリには、銀行口座、クレジットカード、証券口座、電子マネーなどと連携し、残高や利用履歴を自動で取得する機能が搭載されています。これにより、預貯金の残高や投資信託の評価額といった個別の資産情報をアプリ内で確認できます。

しかし、アプリによっては連携可能な金融機関の種類に限りがあったり、不動産や暗号資産、あるいは特定のポイントサイトなど、連携できない資産情報も存在します。また、アプリの主機能が支出管理である場合、資産全体の内訳を分析したり、特定の目標に対する進捗を複数の資産クラス(例: 現金、株式、投資信託)横断で追跡したりする機能が限定的な場合があります。

総資産管理を実現するツールと連携

家計簿アプリを起点としつつ、総資産全体を把握するためには、いくつかの方法が考えられます。

1. 家計簿アプリの資産連携機能を最大限に活用する

普段利用している家計簿アプリに、銀行口座、証券口座、クレジットカード、電子マネー、主要なポイントサービスなどを可能な限り連携させます。アプリによっては、非連携の資産(現金、不動産など)を手動で入力・管理する機能も備わっています。これにより、アプリ内で多くの資産情報を一元的に確認できるようになります。

利用にあたっては、対応している金融機関やサービスの種類、連携の安定性などを確認することが重要です。

2. 資産管理に特化した外部ツールやアプリを活用する

家計簿アプリの枠を超え、より幅広い金融機関や資産クラスに対応した資産管理サービスが存在します。これらのサービスは、複数の銀行、証券会社、年金、ポイント、さらには不動産や暗号資産など、様々な資産情報を集約し、ポートフォリオ全体の評価額、資産クラスごとの構成比、推移などを詳細に分析する機能を提供しています。

家計簿アプリと直接連携できる資産管理ツールは多くありませんが、一部のサービスではAPI連携やデータ出力・インポート機能を通じて、間接的に情報連携が可能な場合もあります。また、それぞれのツールが得意とする領域(例: 支出管理は家計簿アプリ、資産全体の俯瞰は資産管理ツール)に応じて使い分けることも有効です。

3. スプレッドシートや自作ツールで管理する

テクノロジーに親しみがある方であれば、自身でスプレッドシートを作成したり、プログラミングスキルを活かして情報を集約・可視化するツールを自作することも選択肢となり得ます。

スプレッドシートでは、各資産の項目、金額、日付などを記録し、関数を用いて合計額や構成比を計算できます。市販の資産管理テンプレートを利用するのも良いでしょう。

より高度な例としては、公開されているAPIを利用して金融機関やサービスの情報を自動取得し、自身のデータベースに蓄積・分析するシステムを構築することも技術的には可能です。しかし、APIの提供状況、セキュリティ、メンテナンスの手間などを考慮する必要があります。

総資産管理の実践ステップ

総資産管理を始めるための一般的なステップは以下の通りです。

  1. 現在の資産の棚卸し:

    • 利用している銀行口座、証券口座、年金制度(企業型DC、iDeCo)、保険、主要なポイントサービス、その他資産(不動産、個人間貸借など)を全てリストアップします。
    • それぞれの現時点での残高や評価額を確認します。
  2. 管理方法の選択:

    • 利用中の家計簿アプリの資産管理機能で十分か、より専門的な資産管理ツールが必要か、あるいはスプレッドシート等で自身で管理するかを検討します。
    • 複数のツールを組み合わせる場合は、それぞれの役割分担を明確にします。
  3. 情報の集約と入力:

    • 選択したツールに、棚卸しで把握した資産情報を入力または連携設定します。
    • 自動連携が可能なものは設定を行い、手動入力が必要なものは定期的に情報を更新します。
  4. 定期的な確認と分析:

    • 週に一度、月に一度など、決まった頻度で総資産額を確認します。
    • 資産クラスごとの構成比や、一定期間での増減を確認し、目標との比較や今後の計画の見直しに役立てます。

まとめ

家計簿アプリは支出管理の強力なツールですが、それを拡張して総資産全体を把握することで、より包括的なマネー管理が可能になります。新社会人という、これから長く資産形成に取り組む時期だからこそ、早期に総資産を把握し、管理する習慣を身につけることは非常に価値のあることです。

本稿でご紹介した方法を参考に、ご自身の状況に合ったツールや方法を選択し、総資産管理の第一歩を踏み出していただければ幸いです。これにより、ご自身のお金の全体像が明確になり、将来に向けた計画が立てやすくなるでしょう。